“打たなきゃよかった”の裏で、“打ててたら…”が黙って死んでいく

 子宮頸がんワクチンと「不都合な真実」──騒動の裏で何が起きていたのか?


今回はちょっと重めのテーマ。「子宮頸がんワクチン」について、あえて触れてみようと思う。

まあ「ワクチン」って聞くだけで、コロナ禍のあれこれを思い出す人もいるかもしれないけど、今回の話はそれよりずっと前の話。

だけど、あのコロナと同じように、「科学」と「感情」がぶつかって、世の中がちょっとおかしな方向に行ってしまった、っていう意味では、すごく似てる部分がある。



女子高生がワクチンを打ったあとに体調不良を訴えた


2013年ごろのこと。日本で「子宮頸がんワクチン」(正式にはHPVワクチン)の接種が進められていた時期。

このワクチンは、子宮頸がんの原因とされるウイルス(ヒトパピローマウイルス=HPV)の感染を防ぐもので、世界中で導入されている。

で、当初は日本でも「これで若い女性の命が救える!」ってことで、積極的に推進されてた。


ところが、ある日を境に流れが変わる。

ワクチンを打った女子高生が、体の痛みやしびれ、歩けなくなったとか、そういう症状を訴えはじめた。そして、それをメディアが取り上げて、大々的に報道したんだ。


ワイドショーでその子たちが泣きながらインタビューに答えて、「ワクチンさえ打たなければ…」みたいな構成になってる。

すると当然、「そんな危ないもの、うちの子に打たせたくない!」って親御さんの声が一気に広がる。


そして、一部の“声が大きい人たち”が、「これは薬害だ!」「国の責任だ!」と声を上げ、あれよあれよという間に、社会全体がワクチンに疑念を抱きはじめる。



科学的根拠より「印象」が優先された結果


で、問題はここから。


厚生労働省がどう対応したかというと、「安全性についてさらなる情報が必要」として、HPVワクチンの“積極的勧奨”を中止したんだよね。

これ、要するに「ワクチン打ってもらうようにオススメするのは一旦やめましょう」ってこと。打ちたい人は打てるけど、国としては推奨しませんよ、という姿勢に切り替えた。


いや、気持ちはわかるよ。「国のせいで副作用が出た」なんてことになったら大問題になるから、慎重になるのも無理はない。

でも、ここがポイントで、その時点で世界中のデータを見れば、HPVワクチンの副反応ってのは非常にまれだった。


WHO(世界保健機関)も、CDC(米国疾病予防管理センター)も、各国の医療機関も、みんな「このワクチンは有効で、安全性も確認済み」って言ってたわけ。


にもかかわらず、日本だけが「副反応が怖いから、ちょっと様子見しよう」って、独自路線に入った。

結果、どうなったか?



「失われた8年間」で何が起きたか


2013年から2021年までの8年間。日本では、HPVワクチンの接種率がほぼゼロに近い水準まで落ち込んだ。

元々は70%以上あった接種率が、一気に1%未満に。まさに壊滅的なレベル。


で、その間に何が起きたかというと、当然ながら「子宮頸がんを予防できたはずの女性たち」が予防できずに成長していった。

つまり、「あと数年したら、子宮頸がんになるかもしれない若い世代」が、今まさに大人になってるわけ。


一説によれば、この8年間のワクチン接種中止によって、将来的に数千人〜1万人以上の命が失われる可能性があるとも言われてる。

しかもこれは“予防できたはずの死”。それって、相当な社会的損失じゃない?



あの時、何が正しかったのか?


ここで難しいのは、「ワクチンが100%安全とは言えない」というのも事実だってこと。

副反応が出る人も、ごく少数だけど本当に存在する。

だから、「声を上げた女子高生がウソをついていた」とか、そういう話では決してない。


でもね、「副作用が怖いから打たない」っていう話と、「多くの人の命を救えるかどうか」っていう話は、別次元の話なんだよ。


科学の世界ってのは、「全員にとって完璧」なんてありえない。

でも「99.9%の人にとって有益」なら、それを社会全体で推進することに意味がある。

個別の不幸はあっても、それによって救われる命の方がはるかに多いなら、そっちを選ぶべきだろうと。



じゃあ誰が責任を取るの?


この問題の根っこには、「科学的判断を政治とメディアがひっくり返してしまった」という構造がある。

本来、厚労省は「これは科学的に安全と判断されたワクチンです」として、きちんと啓発を続けるべきだった。


だけど、テレビで泣く女子高生の姿を見た政治家が「これはヤバい、支持率下がる」と思って態度を変え、

記者が「このニュースは数字が取れる」と思って、視聴者に不安を与える報道を続けた。


その結果、誰も「責任は自分にある」とは言わずに、予防できたはずの命が、じわじわと失われていく未来が作られてしまった



再開された今、私たちができること


2021年、ようやく日本でもHPVワクチンの積極的勧奨が再開された。

でも、失われた8年間の影響は取り返しがつかない。接種率はゆっくりと戻ってきてはいるけど、まだ不安を抱く人も多い。


だからこそ大事なのは、「正しい情報をきちんと知ること」。

ワクチンの話に限らず、どんな医療や政策にも、常に賛否があって当たり前。

でも、その判断材料が“テレビで見たイメージ”とか“ネットで見かけた誰かの体験談”だけじゃ、危ない。


「事実は何か?」「世界ではどうなっているか?」そういう視点を持って情報を見ていくのが、これからの社会には必要なんだと思う。



おわりに:感情より、科学を信じたい


最後にちょっとだけ。

科学って、冷たく見えるかもしれないけど、本当は「人の命を守るための最大の道具」なんだよね。

その力を信じられる社会であってほしいし、僕らもそこに参加する一人でありたいと思う。


HPVワクチンの一件は、その教訓を僕たちに突きつけている。

これから先、同じようなことが起きた時、今度こそ間違えないように。

感情に流されず、事実を見つめて、冷静に判断すること。それが、僕たちにできる“予防”の第一歩なんじゃないかな。

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